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藤野仁三の論文・論説(和文)
これまで雑誌や新聞に投稿してきた論説・論文を紹介(一部論説・文献についてはPDFを閲覧可)
JPEG規格の特許問題
掲載紙: CIAJ JOURNAL
掲載日: 2003年3月
抄録(英文): In July 2002, Forgent Networks, a video-conferencing company in Austin, Texas, initiated patent license campaigns against digital camera manufacturers in Japan. Forgent’s campaigns cover users of JPEG in all fields of use. This case highlights an emerging problem arising out of the intersection of patent and industrial standard.
はじめに: 特許の資産的価値が高まっている。それにつれて企業の特許戦略が大きく変化している。その変化の一つに、休眠特許の活用がある。具体的には死蔵特許の中から「金になりそうな」特許を掘り起こす動きである。米国の場合、この動きは、休眠特許を買い取り、特許権行使をビジネスとするいわゆる「パテント・エンフォーサー」というグループと、それを成功報酬ベースで支援する弁護士の台頭を促した。エンフォーサーならびにその代理人は、複数の潜在的なライセンシーに「ライセンス」か「訴訟」かの二者択一を迫る戦略をとる。まず、訴訟を忌避する傾向のある企業を最初のターゲットにして、ライセンス契約の実績を蓄積し、結果として他の未契約の企業にとって拒否しにくい環境を醸成していく。多くの場合、ライセンス料は一般に低利であるが、多数のライセンシーとの間で契約が成立すると、大きな収入が期待できる。 このような動きが、業界の標準規格に関連しているのが最近の傾向である。標準規格は、多くのユーザーに使用される基本技術の場合が多く、その裾野は広い。したがって、そのようなユーザーに特許の投網をかけることができれば、これほど効率的な権利行使はない。標準規格は、伝統的に特許に包含されていない成熟した技術に対して認められてきた。その基本的な使命は、互換性や共通性を確保することにある。そのユーザーをたどっていけば、ある程度のユーザーの広がりが推測できる。パテント・エンフォーサーにとっては、格好の漁場となる。今日のように、特許が資産であるなどとは考えもしなかった時代に策定された標準規格は、特許に対するガードも甘かったのも事実。最近、話題となっている米フォージェント・ネットワークス社によるJPEG規格ユーザーに対する特許料の徴収問題は、まさにそこを突いた特許権行使と言える。 本稿は、JPEGの特許問題を契機として、標準規格と特許権の衝突の問題を検討するものである。

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